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ロブ・ロイ/ロマンに生きた男」の優れたリアリティを前フリに語ってみたい。
現代を舞台にしたドラマでさえ,甚だリアリティに乏しい代物があるのに
この17世紀を舞台にした映画には,いかにもな現実感があった。
ハイランダーのロブはもちろんの事、貴族ですら見た目が薄汚れている。
服は煤けてヨレヨレだし顔は脂ぎっているし,建物は悲しいほどに素朴でイビツだ。
スターリングラード」でソビエト兵としてロン・パールマンが出て来るような
「うわ?・・・」とのけぞるネタバレ感が周到に排除されており,
17世紀を写実的に描き切るという野心を感じる映画だった。
Ron.jpg
何だとこのヤロー

で,「宇宙の孤児」である。
かようなリアリティの話が何かと言うと、この小説の「全体像」についてである。
ストイックで簡潔な文体により状況説明は過不足なくなされているのだが
主人公はじめ,どれだけ薄汚れて平気でいるのかとか,ミューティのエリアの
目を覆いたくなるような不潔さと血なまぐささであるとか,
「何世代にも渡り使われてすり減ったデッキ」がどれほど壮絶にボロッちいのかとか
・・・そのボロい屑鉄の塊が全世界である訳で・・・
映像化して,すべてを余さず晒したらどれほど凄まじく悲惨な光景かという。
農耕やリサイクルで秩序が保たれているから一安心と思うのは大間違いで,
それは全体を客観的に見る視野を失った内部の住人の観念。
極論すれば「生存者」のような極限のサバイバルが日常化して定着して
辛うじて安定を保っている末期的世界なのだ。
一種時代を先取りしたようなバロック的「豊かな荒廃」の全体像。
この,ハインラインの脳から文を通して滲んで来るリアリティに空缶は魅せられる。
地に足のついたイマジネーターっぷり。これだけでもハインランのSF資質は評価されるべき。
人類の一種野蛮な側面についての骨太な考察が,
後年タカ派的イデオロギーに硬直してしまうのはちょっと残念なのだが
それでもハインラインの物事を見通す目は確かだ。
そして単に,未来の「繰り返される人間の歴史」を見据えるだけではなく
荒廃しきった居住エリアと操縦室の対比、船長の日誌などSF的魅力にも溢れている。

追記:
船長の日誌のくだりは本当に圧巻だ。言わずもがなのあの迫力を
果てもなく語りたい欲求に駆られる。
ああいうピンポイントで衝撃を与えられるのも,ハインラインの頭の中に
確固たる世界観があった証しだと思う。
しかしゾクッときたわアレは・・・


何よりクライマックス、バンガード号の無骨な巨体が見えるシーン・・・
SF名場面、なんてカテゴリがあるなら推しておきたいくだりである。
あの後も,少しずつ,少しずつ質量を消費しながらあの世界は続いていくんだろうな・・・。

宇宙の孤児 (ハヤカワ文庫 SF 281)宇宙の孤児 (ハヤカワ文庫 SF 281)
(1978/02)
ロバート A.ハインライン

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なんかね,2001年だとか宇宙の孤児とかの言わんとする部分を
サクっと包括しているような歌に思えて貼ってみました


追記:
ほんとにバンガード号はどこに行くんだろう。
目的のアルファ・ケンタウリにいまだ向かっているのか
或いは通過した後なのか・・・
反乱の後、航路が予定コースを外れていない保証もないし
ラストの星がどこなのかはまったく未知のままだ。
訳のわからない世界に放りだされて,一からやり直していく主人公たちに
一抹の悲しみと愛情を抱くのは必然だ。
「自由未来」ラストの一種突き放したような開放感、
「夏への扉」の猫と二人きりで目指す未知の未来、
「宇宙の戦士」ラストのお伽噺みたいなオチから逆に考えさせられる親子の溝。
ゴッツい話の裏に,打開すべき課題として提示されているものの
孤独感、寂しさが見え隠れするのがハインライン基調。
この人の個人史に疎いのだけど,とてもウェットな一面がありそうな気がする。

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