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一言で言えば「『ロボコップ3』のロボ抜き絶望増し増し」。
紹介が終わってしまった。
・・・ではあまりも粗雑なので粗筋を。
通貨制度がリセットされたが失敗し,世界的不況に陥った近未来。
NYのロングアイランドは住民の暴動が慢性化し内戦状態になり、常時軍に包囲され
戒厳令が敷かれている。
そして,通貨リセットのどさくさに紛れ、世界中の企業を傘下に治めた
元・麻薬カルテル「ドライコ社」が暴君のように世界に君臨している。
ドライコ社は、スラムで人びとを癒す不思議な男に目をつけ
「救世主」として売り出そうと画策し・・・。
何か書いていてゾクゾクしてきた。この畳み込むようなデッドエンドぶり。
この本が上梓された1990年という年代を思えば,レーガノミクス失敗の果てを想起させるべく
この世界が構築された事は容易に理解できる。そして作品のトーンは
「ディストピアらしさ」という意味で出色であり,暗鬱とした調和を見せている・・・けど,
我々はすでにクリントンとオバマの間の時期を知っている。

テーマはまるで違うけど,この曲だろうな

ウォマックの冷徹で静かな筆致をあざ笑うかのような熱苦しく騒々しく、
筒井康隆のドタバタ小説のような,予想を斜め下に行く時代を我々は生きて来た。
筒井御大の世界が冗談抜きのリアリティを持ってはウォマック形無しである。
そんな意味で,比較的近年に書かれているにも関わらず、ある種のノスタルジーが
読後感にどうしても滲む。こういうディストピア懐かしいよね的な。
この小説に憧憬が湧くってどんな世界なんだよココはゴルァ!
ロボコップ3では,娯楽映画らしく神の救済がおおらかに語られていたが
(特撮ファンが空飛ぶロボを見て笑っていたが,あれは聖マーフィーの空中携挙だ)
この小説の「救世主」はそう簡単な代物ではない。
ヒーザーン・・・異教徒を意味するスラング。
救世主がいるのならば,なぜ虐げられたヒーザーンたるユダヤの血統達が顔を出すのか。
この世に真の救いはあるのか。
読む際の注意としては,会話の中に雑多な新情報がポンポン飛び出してくるが
「ああ,サイバーパンクの『フットワーク』ってやつか」と読み流してはいけないという事。
ある雑談のひとことが、後の展開での重要な情報になっているという事の連続なので
ゆっくり読まないと訳がわからなくなる。ちょっと骨の折れる構成。
それから,全体を貫く「ふたつに分離した神」という宗教観は後期ディック的というか
グノーシス的だが,本書は連作のひとつでり,本邦未訳の別な巻を読まないと
その詳細が掴めないようだ。故に,レスターとジョアナの対というアナロジーは理解できても
ラストの一言が「?」ではある。
訳者の黒丸尚氏の早過ぎた死故か,プレッシェル野郎に変な気を使ったのか不明だが
残りも是非翻訳してほしい。切にお願いしますハヤカワ様。

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