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「ロストフの殺人鬼」「赤い切り裂き魔」の異名で知られる
旧ソビエトの連続殺人鬼,アンドレイ・チカチーロ
ソビエト民間警察側の視点から,その逮捕までを描いたノンフィクション。

子供たちは森に消えた (ハヤカワ文庫NF)子供たちは森に消えた (ハヤカワ文庫NF)
(2009/01/06)
ロバート・カレン

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6月23日に一度アップした記事ですが,大幅に改稿したので
新規の記事としてアップしなおします。



冒頭、最初の犠牲者が発見される場面から話は始まるが
犠牲者の生い立ちや現場周辺の環境についてなどが細々と書かれ、かなりテンポ悪し。
主任捜査官ブラコフを初めとする関係者たちの詳細な紹介は,
チカチーロを追いつめたガッツの源を知る上で不可欠だろうけど
正直、もっと割愛していいと感じた。本筋とどこまで関係があるのかちょっと疑問だ。
「快く取材に応じてくれた事への感謝」ってやつだろうか。
そんなこんなでかなりモタつく導入部分だが,ここを頑張ってクリアすれば
話はテンポアップしていき中盤からは怒濤の勢いである。
それも道理、最終的に五十数人が殺されている。とても詳細を描ききれない。
最低限のデータだけで示される犠牲者たちが次々に現れては消えて行く。
「何人目だっけ?」と,こちらの感覚まで麻痺してくる恐ろしさ。
chikatilo.jpg
飲んでも暴れない良き亭主(…)として振る舞っていたチカチーロ

そして凄まじい勢いで拡大していく捜査状況に対する民警たちのカオスぶり。
無実の容疑者からの自白の強要、という恐怖警察の黄金パターン連発だが
これにはトンでもない理由があった。
ソビエトの裁判では,証拠として何よりも自白の価値が重んじられる為、
とりあえずゲロってもらわないと話が進まないのだ。
どんだけ有罪かという色眼鏡でしか容疑者を扱えないカフカ的欠陥システム。
事件の真相解明など百億光年の彼方である。
そしてパトロールをサボりつつ,恣意的な絨毯捜査作戦で自殺者を出す。
犯罪対正義という図式が崩壊して,犯罪者と組織的暴力が
一般市民を巻き込みながら救いのないイタチごっこを繰り広げていく。
指揮を取るボス格の人びとはあくまで血の通ったプロなのだが、
それでも現場はこのザマだ。
こっちで感想を書いた世界そのまんまである。ここにもまたソビエト式幻惑仕掛け。
ともあれ,そうして無軌道に展開していく状況の中に、チラリとチカチーロが現れる。
一度は捜査線上に浮かびながら,まぁ無関係でしょうと流されているのだ。
サブリミナルのひとコマのような気味の悪い存在感。
チラリ、といえばゴルバチョフも後半少しだけ顔を出す。
彼のペレストロイカによってバカな幹部が飛ばされ、
グラスノスチで捜査が急展開して事件は解決した。
旧体制のベールを剥いでみたら腐ったゴミが出るわ出るわという。
チカチーロも,警察の機能不全もそのひとつだった。そういう時代だったのである。
実録の常として文は機能的かつ無骨だが,飾らずとも伝わるこの何というか。
事件のありのままの饐えた空気を,当事者たちの視線で体感できるという意味で
貴重な作品ではなかろうか。

チカチーロの所業はロバート.レスラーの言う快楽殺人そのものだが,
米ソでは背景が違うという事情を勘案すると疑問が湧く。
「堕落した資本主義的な犯罪」たる売春が公式には存在しないとされた旧ソビエト。
ほぼインポテンツだったチカチーロが,金目当ての浮浪者と迅速に事を済ませるのが
至難の技だったのは想像に難くない。
そして「突き刺す悦び」、代償セックスとしての殺害行為。
暴力とセックスが結びついたドぎついポルノに首まで漬かったアメリカの快楽殺人犯と,
ファンタジーのバリエーションに乏しいソビエトのチカチーロの行為は同一かという疑問が湧く。
彼が,探偵小説の類いから寒々としたバイオレンスの幻想を得ていたのは確かだが,
ありていに言えば男性器-ナイフという愚直なアナロジーに狂うほど、チカチーロが
刺殺行為を信奉していたかという疑問。結果として快楽を得ていたとしてもだ。
トレーラーを使ってキャラメル一個を運ぶような,途轍もない徒労だと感じてはいなかったのか。
刺殺に対する必然-目的か手段か・・・つまり
刺殺でなきゃいけない,と,刺殺しかないから,の隔たりは大きいと思うのだが
下手な考え何とやら・・・なんだろうか。
このへんはどうなんでしょうレスラーさん。

FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記 (ハヤカワ文庫NF)FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記 (ハヤカワ文庫NF)
(2000/12)
ロバート・K. レスラートム シャットマン

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