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田中裕子のやつ。ネタバレあり。
田中裕子の「天城越え」について。

初めての就職先の社長が南方戦線帰りの人だった。
物腰の柔らかい老紳士で、酒に酔っては若造だった空缶に
李香蘭や淡谷のり子の魅力を訥々と語って聞かせてくれた。
やれ立ち振る舞いの艶やかさが、声のかすれ具合が云々と。
そしてその社長が好きだったのが田中裕子で、
「あ?オレも好きッスよ?可愛いッスよね?」と軽薄に相づちを打ったら
後日わざわざダビングして郵送してくれたのがこの「天城越え」。
デバッグとかデバッグとかデバッグが嫌になってその会社は辞めたけど
社長にもらった天城越えのテープは何度も見た。
まったりと美人を語る社長の枯れた笑みに
どれだけの人生と過去が刻まれていたのかと今にして思う。
老い、晩年、忘れ得ぬ女Femme fatale・・・

あの社長はえろいひとだったと思う。
にも関わらずそういった厳粛な重みを感じるのは
性というものが、笑いにもなれば感慨にもなりえる諸刃の剣である故で
老人の性であれば尚更という。
天城越えはそういった危うい感覚を上手に消化していると思う。
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聖・娼婦であるハナの両面性はもちろんの事、
男女の交わりへの憧れと嫌悪といった諸々を
すべてはおっさん達の遠い昔の物語という絶対性のオブラートに包みこむ。
限りなく下世話で悲惨な話でありながら、なおも美しいのだ。
この物の見方はまた、男はいつまでたっても中身は少年のまま、という神話にも合致する。
人生の僅かな時間を共にしただけの酌女を一生背負って生きる生き方。
晩年を迎えた老社長がこの映画を熱く語ったのも分かるような気がする。
そして少年というものは得てして報われぬ孤独な独身者だ。
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ハナと土工の交わりを覗き見る少年の、アクタイオンさながらの渇望。
少年の中で、土工はハナと交わるはずだった自身でもあり罰せられるべきアクタイオンでもある。
触れ合いたい渇望とその汚らわしさの間で葛藤する少年の悲しい一人芝居、
土工と自分を重ねた自罰行為・・・それがあの殺人なのだと空缶は思う。
土工の断末魔の泣き叫ぶ声は、そのまま少年の哀しみの声だ。
そういえば、少年だった印刷屋が倒れた時、老刑事以外の付き添いがいなかった事。
・・・ハナに一生の貞操を誓ったのか、もしかすると。
何と言う独身者冥利。

「さよなら」の涙腺決壊、序盤でのジロさんや一徳がかもす他人ぶりが語る
天城越え-人生というアナロジー、すべてが優れた映画だと思うけど多少の不満もある。
渡瀬恒彦の老け役がそのひとつ。
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21世紀になってもギラついてるあの人が、あの若さで老人を演じるのに無理がある。
ただの怪しい人にしか見えない。ちょっとミスキャストじゃないかな。
あとラスト、平幹二朗が呻いて倒れる場面。
・胃病の発作であるなら、老刑事が病人を見て見ぬふりをして帰る筈はない。
・老刑事は病気と見抜きつつ、ハナへの罰として放置した?
・平幹二朗は、単に過去の思いが一気に蘇って慟哭しているだけ?
・老刑事は発作を慟哭ととり違えて帰ろうとした?
その後の病院の場面でようやく、平が胃病で倒れた事が明白になる。
そういや会話中、あせってコーヒーがぶ飲みしてたなと思い出したり。
そして廊下では老刑事が。
恐らく「どーしました!?しっかり!」なんて場面が途中にあるんだろうが
どうも流れが曖昧だ。
あと言うまでもなくラスもラスの暴走族。
あの頃あーいうあんちゃんに囲まれて育った俺がこうして感想書いてんだぞゴルァ

追記:
ほんと何で暴走族なんだろう。
「風情も人情も廃れて、今やこのザマだよやーれやれ・・・チッ!」だよね、あれ。
単に今昔のギャップを演出するなら、ウォーキングしてる今風の若者でも出せば済む事だし。
まぁたしかに、自らの追憶を映画に重ねて涙する中高齢者・・・そういう層にこそ
この映画はふさわしいと思う。
だからといってなぜ、制作者自らの手で余韻をブチ壊してまで
「今の若造は・・・」にもっていくんだろう。被害妄想的ですらある。
エヴァの「気持ち悪い・・・」に匹敵する後味の悪さだ。
ついでに書けば、大塚ハナって最底辺の図太い商売女な訳で、
そんな女が見せた菩薩の心ってのが話のキモじゃない?
なのに現代のDQNたる暴走族はああいう使い方しますかっていうね。


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