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主人公の名はレンコ。
ベテラン刑事でありながら,実直さと反逆精神ゆえに
組織から浮いている一匹狼。
これは「ダーティ・ハリー」なんかと同じでまぁパターン。
この浮いている理由というのがいかにもソビエトらしい。
レンコの父親がスターリン体制下で武勲を立てた大物なのだが
敵の耳をそいで戦勝品にするような,悪いイメージそのままの
残虐ロスケ野郎。そしてレンコの母は・・・
ここからレンコの体制嫌悪が始まっている。
そして,英雄の息子として約束された将来を蹴って刑事の職に。
レンコのモラリティの源が,父の七光りあればこその
エリート教育にあるというのが何とも皮肉だ。
刑事としては擦れっ枯らしでも性格はあくまで一本気。
ここに周囲との対立の真の原因がある。
対する組織・国のシステムがすさまじく腐っているのだ。
本書には,油断していると寝首を掻いてきそうな連中が
目白押しで登場する。強欲、妬み、二枚舌、冷血、放漫、凶悪。
抑圧された体制下での歪んだ適応形態である。
そんな人種ばかりで成り立つ社会・・・
その猥雑な描写があまりに淡々と進むので目眩の感覚が湧いてくる。
そして無駄に馬鹿でかく無骨なモスクワの景観。
「豊かな荒廃」の俯瞰図が凄まじく幻惑的でサイバーパンク的ですらある。
サイバーパンクの諸作品には東側のガジェットが出てくるものが多いが
もしかするとこの作品からの影響ってあるのだろうか。
無論、あれは馴染みの西欧的枠組みが崩壊しているという記号でもあるが
サイバーパンク隆盛当時から時代は更に進んでいる。
アメリカ主導(のように糊塗されていた)の世界観も薄らいで
ニュースには東側、第三世界と呼ばれた地域のリアルな情勢が日々飛び交っている。
雰囲気に関しては時代がサイバーパンクに追いついたと言ってもいい。
「ゴーリキー・パーク」の「ソビエト幻惑仕掛け」の迫力は薄らぐどころか
今こそ旬という気がする。

BGMをつけるなら迷わずコレ。




後半、話はそれまでのトリッキーな展開から一転し,
レンコとイリーナの悲愴な恋の顛末に収束していく。
このあたりは読んでいて本当に辛い。
モスクワでは海千山千の腕利きだったレンコが,まるで無力になってしまうのだ。
状況も読めず、システムも理解できない「無用の党員」でしかないレンコ。
そして状況を打破する為,辛い選択に賭けるイリーナ。
籠の鳥の悲しい足掻き。
オーウェルの「1984年」を思い出さずにはいられない。
処刑を待つだけのウィンストンとジュリアの悲しい行く末を。
ラストも決して壮快ではない。あれやこれや,胸につかえる要素ばかりで
かなりほろ苦いものがある。
でも,それだからこそレンコの「えーいやっちまえ!」は
一粒の希望の種のように愛おしい。

追記:個人的には,プリブルーダ少佐が最優秀演技賞。
食えないKGB野郎だけど憎めないわ・・・。
こんな感じ(軍人の方)のキャラだと思う。間違いない。
PG_HappyTogether.jpg
レニングラード・カウボーイズ
この人達も変な方向から東西の風穴を空けた
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