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読書生活の初期に出会い、今日まで何度も再読してきた作品なだけに
感想を書くのがかえって難しい。
ふだん呼吸している空気の味を形容しようとするようなものだ。
何で何度も読みたくなるか自己検証してみると,中学時代のあれこれが
思い出されてきた。
複雑な生活環境の中で空缶は中坊のくせに疲れていた。
そしてのめるように読書と映画にはまっていったのだが,その初期に感銘を受けたのが
「愛の嵐」であり「赤い帽子の女」であり「ソラリス」だった。
破滅前提の狂おしくダウナーな恋愛ドラマ・・・「情念」って奴にやたら惹かれたのだ。
裏返しの栄光としての情念。
狙った訳でもないのにこんなのばかりが空缶の周囲に揃ったのも何かの因縁である。
そしてもう一方では,このブログのタイトルでもある「灰とダイヤモンド」のマチェクその他、
情念あらばこその突き抜けた輝きを持って死んでいったヒーロー達の存在。
学生運動全盛の時代に生まれなくて本当によかったと思う。
球根栽培に熱中しつつ明日のジョーを目指していたかも知れない。
五社英雄映画の,娯楽・様式美としての情念の健全さと,
原チャとパンクロックが空缶をただのボンクラに導いてくれた。
有り難や有り難や。

さて,脱洗脳が済んだ今現在、一種のノスタルジーで再読する「ソラリス」だが
冷静な目で見てみると、やはりこれはレムの壮大な「ひっかけ」なのだと気付く。
一番表面の破滅的恋愛要素と,それを支えるコピーマシンとしてのソラリス。
その恋愛要素があまりにも美し過ぎて純な中坊はイチコロよという次第である。
いや,この刹那的恋愛ドラマの部分だけでも素晴らしいのは確かだ。
ソダーバーグ版ソラリスなど「ソラリス・・・愛の星(笑)」と言わんばかりだったし
面白いには違いないのだが・・・それでは物語の半分しか見ていない事になる。
ハリーが自殺を図ったり、あろうことかサルトリウスを非人間的だとなじる事で
彼女の人間らしさ-ディックによればこれこそが人間の本質という事になるが-が
完成されたように思えるが,どこまで行っても彼女はコピーであり,クリスの脳から抽出された
超自然的な擬態に過ぎない。
人間らしく悩み苦悩するハリーの人間性は本物か否か。
「んな事どうでもいいじゃん,愛してるんだしオレ」で流すクリスと
あくまでソラリスの化け物として扱うサルトリウス、一体どちらが正しいのか。
サルトリウスも,科学者なればこそ感情を相克して機械的に振る舞うのだが
それはそれで,また一種の感情的反応である。
未知のガジェットに感情的に接する可笑しさと悲しさ。これは人間たる我々の問題である。
そしてこの恋愛が悲しいのは,見た目の状況もあるけど
上に述べた意味で初めからクリスの一人相撲だからだ。

もっとも,パソコンに馴染んだ身として言えば
本物ハリーの記憶→意味不明なソラリス→複製ハリー,という経路は例えれば
あるファイルがどんな仕組みのサーバにアップロードされていようとも
ダウンロード後に正しくファイルが展開できればそれでいいのと同じで
基本、ソラリスの動機はハリーの人間性とは無関係だ。
そしてこの理屈で言えば複製ハリーは明らかに人間的である。
本物のハリーの愚直な丸コピーなのだから。
物理的には高度な幻で,識域下ではモンスター的なものを持つ「まがい」ではあるけど。
人間性とはコピー可能な代物である,というシニカルな見方にもなるが,
ある男の脳内に,一人の人間がそっくり納まっていたという
シュミレーション・仮想現実的な意味あいでのワンダー,そして何より
「彼女は死んでしまったが私の中で生きている」という表現のSF的展開として
空缶としては情緒的に捉えたい。
肝要な事は,エヴァ風に言えば「クリスの中のハリー」。
あくまで複製ハリーは本物ハリーとは別物という事だ。
クリスはこのハリーの映し身に,わずかな差異を認めつつも
本物との極度の相似を認めて悩むのだが,第三者がハリーらしさの検証をしたとしたら
果たして複製ハリーは本物ハリーとどこまで似ているのか。
複製ハリーはあくまでクリスの主観の産物なのだ。
残酷なまでにリアルな,対話形式の追憶がクリスを見舞っている。
ここが人間ドラマとして一番のツボ、素直に訴えてくる部分に思える。
その生きた追憶がどれだけ人間的なのかは枝葉の問題かも知れない。

唐突だけど,キューブリックがソラリスを映画化したらどうなっていたかと思う。
水槽の中のアリの巣を観察するような突き放した視線でドラマを紡いだキューブリック。
ソラリスの海と果てしなくニアイコールな超越的な地点から,
ステーション内部の奇妙なドラマを淡々と描いた事だろうと思う。
 
ちょっと長くなりそうなので今日はココまで。
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